木内デパート展望塔・巫女人形おみくじ自販機

木内デパート屋上「お子さま遊技場」を見下ろし、ロケット型ネオン塔の足場でもあった展望塔の、ピンボール・マシーンが並ぶゲームコーナーのかたすみに、巫女さん姿の人形がおみくじを選んでくれる、からくり仕掛けの自販機が鎮座していたのを憶えているだろうか。
10円硬貨を投入すると鳥居の下に立つ人形が、おもむろに後ろを向き、参道を進み拝殿の扉を押し開けて、おみくじをお盆にのせて帰ってくる、古典的からくり人形の流れをくむ見世物的装置。展望台に立ち寄るたびに、その動きにときめいていた。
昭和30年代から40年代にかけて、デパートの娯楽施設などで見られた「おみくじ自販機」はやがて消失。しかし、今もその仲間たちが各地の神社仏閣・観光地に健在、遠くは中国・台湾にまで輸出され、道教寺院スタイルに姿を変えて活躍している。
北海道定山渓
静岡県浜松市・奥山半僧坊
中国 南京・鶏鳴寺
▲なぜデパートに「おみくじ自販機」?
「おみくじ自販機」を製造する大阪の岡本製作所は、観覧車・メリーゴーランドなど遊園地用遊具全般を手がける機械メーカー。木内デパート屋上「お子さま遊技場」の遊具も同社製と思われ、その関係で「おみくじ自販機」も納入されたものだろう。同様な経緯で、屋上に遊園地がある全国のデパートのゲームコーナーなどに、少々場違いな「おみくじ自販機」が設置されていった。

1973
▲元祖おみくじ自販機の「女子道社」
自動販売機とおみくじの組み合わせは一見異質に見えるが、実は両者の結びつきは深い。全国のおみくじ製造シェア60%以上を誇る、山口県の「女子道社」が「おみくじ自販機」の元祖。
おみくじの故郷・周南市かの寺社仏閣がそれぞれ自家製のおみくじを作っていた時代、宮本重胤氏は吉凶判断に和歌をおりこんだおみくじと、その頒布機械(自販機)を考案。全国の神社に配布する「敬神婦人会」機関誌『女子道』のネットワークを通して、機関誌の印刷技術を駆使したおみくじの販路を拡大していく。
‥‥前略‥‥
女子道社の歴史は明治時代までさかのぼります。男尊女卑の風潮強い当時の世相にあって、先々代の二所山田神社の宮司宮本重胤さんは、神道には本来女性をけがれとみなす思想はなかったことから、女性神主の登用を提言し、女性参政権をいち早く訴えました。女性を対象とした全国組織『敬神婦人会』を設立し、女性の自立を主張、その教化の一環として明治39年機関誌『女子道』を発刊しました。そしてその資金源として考えられたのがおみくじであり、女子道社が創業されました。
心を込めて折られたおみくじは神社に祀られ、清めの儀式の後、日本全国だけでなく、遠くはハワイまで発送されます。おみくじの種類は全部で18種類。先々代が明星派、先代がアララギ派の歌人であったこともあり、和歌を織り込んだみくじをはじめ、金みくじ、赤みくじ、振り出し用みくじなどの他、外国人観光客や学生向けの和英文みくじ、催事・イベント用の開運みくじなど、時代の変化や人々のニーズに応じたおみくじを発案しています。また、羽車式みくじ機、電動式みくじ機などのおみくじ販売機の製造も行い、現在まで多くの神社仏閣へ納品しています。‥‥後略‥‥周南市観光協会/女子道社 より
30年以上続いた機関誌『女子道』は廃刊するも、おみくじ事業の「女子道社」は存続、今も各地に見られる、赤い塗装の各種おみくじ販売機はすべて「女子道社」の手になるものだ。
おみくじの自動販売機・女子道社製
ちなみに、ネット上に「宮本重胤が明治39年に開発したおみくじ販売機が我国最古の自販機」との記述がみられるが、日本初の自販機は発明家・俵谷高七が明治21年に特許出願した煙草自販機である。

2010.11 封鎖されて久しい展望塔
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関連リンク
遊園地機械の総合メーカー 岡本製作所
女子道社/周南市観光協会
二所山田神社 - Wikipedia
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