二〇世紀ひみつ基地

●土地の記憶●歴史●民俗●路上観察●広告●音楽●二〇世紀ノスタルジア・・・秋田市を中心に

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

天地を結ぶアンテナ・和洋女子高モニュメント

阿部米蔵によるパブリックアート・その7

 
2010.05

広小路のキャッスルホテル周辺からお堀の向こうを眺めると、緑濃き旧城地に建つ秋田和洋女子高校の屋上に、リングが連なる金属製の物体が光り輝いているのが目にとまる。

避雷針の役割も果たしているのかもしれない、アンテナのようなその謎の物体は、鉄筋コンクリート四階建て新校舎の落成に際して設置された阿部米蔵氏の手になるモニュメント。


阿部米蔵「三愛のモニュマン」昭和41年(1966)

それまでに阿部氏が制作した、人物を配した野外モニュメントとは一線を画し、屋上という特殊な環境のため、遠方から見上げても明瞭なフォルムを特徴とする、モダンな作品となっているが、デザイン・コンセプトは資料がないため不明。

リングと直線で構成されたそのモニュメントを眺めていたら、ふと「相輪」のことが頭をよぎった。

「相輪」とは、五重塔に代表される「塔」の上に設置された、天に向かって延びる金属製の装飾。建築工学的には建物を安定させる「重し」の役割を持つ「相輪」の、「塔」をつらぬく心柱(しんばしら)に連なる九つの輪を「九輪」もしくは「宝輪」と称し、それぞれが五大如来と四大菩薩を表すという。



「三愛のモニュマン」の最も大きなリングの中央にスリットが開けられ、そこから三本の棒が放射状に延びているが、これを一つのリングとみなした場合、リングの総数は「相輪」と同じく九つ。モニュメントの下にわずかに顔をのぞかせている、曲線を描く台座は五重塔の屋根のようにもみえる。

秋田駅前広場のモニュメント「団欒の群像」を阿部氏自らが解説した随筆のなかに、「原初的家族の団らんは、奈良薬師寺東塔相輪の構成に教えられた」と、「相輪」の名を挙げていることからも、九つの輪が連なる塔上の「相輪」と、同じく九つのリングで構成された屋上のモニュメントの相似と呼応は偶然の一致ではなく、「相輪」の思想と形体をモデルとした新たなる「相輪」の創造を通して、阿部氏は日本の伝統美とモダンデザインの融合を試みたのではないだろうか。

天と地を結ぶ塔上の「相隣」をモデルとしたモニュメントを構成する三本の支柱と九つの輪。三と九という陽数(天数)。「三愛」の三は、和洋高校校訓「敬・愛・信」を表すのか、はたまた「天・地・人」か・・・・・・。旧城地の風景に溶け込み、和洋女子高のシンボルとして耀きつづけるモニュメントへの妄想は尽きない。


大きな地図で見る

話は変わって、東京の下町に現在建築中の超高層タワー「東京スカイツリー」。電波塔でありランドマーク、そして巨大なパブリックアートでもあるそのタワーのデザイン・コンセプトは「時空を超えた都市景観の創造:日本の伝統美と近未来的デザインの融合」。



最小単位で安定が得られる三角形の立ち上がりから、頭頂部に向かって徐々に円形へと変化するゆるやかなラインは、日本刀や伝統日本建築にみられる曲線「そり」と「むくり」を意識し、耐震性を考慮した構造システムは五重塔の構造原理に倣ったという。完成予想図で見るその姿は天と地を結ぶ塔上の「相輪」にも似て、はるかなる天空を指向している。

_________

関連リンク

秋田和洋女子高等学校

社寺建築 -相輪編

TOKYO SKY TREE

関連記事

阿部米蔵によるパブリックアート・その1
二〇世紀ひみつ基地 中通タマゴ公園のひみつ・遊びの彫刻

阿部米蔵によるパブリックアート・その2
二〇世紀ひみつ基地 団欒の群像・秋田駅前モニュメント

阿部米蔵によるパブリックアート・その3
二〇世紀ひみつ基地 自由の群像・八橋陸上競技場前モニュメント

阿部米蔵によるパブリックアート・その4
二〇世紀ひみつ基地 交通安全のモニュマン・山王大通り

阿部米蔵によるパブリックアート・その5
二〇世紀ひみつ基地 千秋公園の水鳥モニュメント二題

阿部米蔵によるパブリックアート・その6
二〇世紀ひみつ基地 成長の群像・明徳小学校モニュメント

| 散歩写真・路上観察 | 23:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://20century.blog2.fc2.com/tb.php/706-9631e393

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT