二〇世紀ひみつ基地

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本丸にカヤの実落ちて陽が落ちて

この時期、千秋公園本丸の佐竹義尭(よしたか)公銅像の裏、池と築山(つきやま)のある藩政時代の御庭に立つと、あたりが柑橘類に似て特有な、森の香りに包まれていることに気づく。足下に目をやると、落ちて間もない緑色や、熟してて褐色のカヤ(榧)の実が無数に。


榧の実のそれと知らるる曲ある香 高澤良一
てのひらは野にあり榧の実匂う鬼や 金子皆子

榧の樹

イチイ科の常緑針葉高木「カヤ」の名は、その枝葉をいぶして、蚊を追い払う「蚊遣(かや)り」として使ったことにちなむという。緻密で美しい木目をもつ木材は、そろばん玉、数珠、彫刻材、高級碁盤・将棋盤などの材料として珍重される。節分にその枝を「魔除け」として戸口に立てる地方もあるのは、葉の先がとがって触ると痛いことからか。
榧の木は榧の実降らす雨降らす 中村明子
ほたほたと落つ榧の実も夢のもの 石塚友二
種から絞り出した香りの良い油は、頭髪油、食用油、灯火油などに活用された。カヤ油とゴマ油、または菜種油を混ぜたものは、上級の天ぷら油として高級料亭などで今も使われる。『日本山林副産物製造編』(明治19年刊)に「此油は厳寒に至るも凝結する事無く燈火用に供すれば火光他油に優り又殊に食用に供し其味美なり」とあるように、寒くても固まることがなく(凝点は零下20度)、寒冷地の灯火油として最適だった。

アク抜きしたアーモンド状の種を炒ったものは香ばしく、これを正月の縁起物としておせちに添える地方もあり、今もカヤの実を混ぜた煎餅やクッキーが市販されている。薬効は腸内寄生虫駆除、頻尿、夜尿症、小児癇癪、食欲不振など。


かやの木山の

作詞 北原白秋
作曲 山田耕筰

かやの木山の かやの実は
いつかこぼれて ひろわれて
 
山家(やまが)のお婆(ば)さは いろり端
粗朶(そだ)たき 柴たき 燈(あかり)つけ
 
かやの実 かやの実 それ 爆(は)ぜた
今夜も雨だろ もう寝よよ
 
お猿が啼くだで 早よお眠(ね)よ

榧の実の匂ひ掌にある楽しさよ 浜田佐佗子
栗鼠馴れて榧の実かくす寺の畑 黒木野雨
カヤの実はリスの大好物、千秋公園に野生リスがいた頃は、カヤの実やドングリを抱えた可愛らしい姿がみられたものだ。

今はその実を拾う者も居らないであろうカヤの木の下にしばし佇み、すがすがしき森の香りを胸一杯に吸い込む。

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