二〇世紀ひみつ基地

●土地の記憶●歴史●民俗●路上観察●広告●音楽●二〇世紀ノスタルジア・・・秋田市を中心に

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

ひだりみぎ茅の輪の軌跡 [∞] 無限大

六月三十日は「夏越の祓」(なごしのはらえ)。

千秋公園二の丸に鎮座する弥高神社でも、二十日頃から境内に「茅の輪」(ちのわ)がつくられ、三十日には「大祓式」(おおはらえのしき)がとりおこなわれた。


弥高神社

六月と十二月の晦日(つごもり)に行われる「大祓」のうち、六月に行われるのが「夏越の祓」。年二回の「大祓」の日、平安朝の頃には、京都朱雀門前の広場で、親王以下百官男女をあつめ、国家・万民の罪穢(つみけがれ)を祓う神事がとりおこなわれた。「大祓」はその時代、国家的な祭祀、いわゆる政(まつりごと)であり、今も宮中をはじめ各地の神社でおこなわれている。


●上代の「罪」の概念

神道では、「清浄」「清明心」(清き明(あか)き心)を重視し、人が積み重ねた罪穢れ(つみけがれ)を祓い清め、浄化することを神事祭典の基本としている。

「罪」の語源は「つつみ」で、「障」「恙」の漢字があてられた「病気などの災厄、障害」を意味する言葉。

「…事幸(ことさき)く真幸(まさき)くませと恙(つつみ)なく…」(万葉集)、「恙(つつが)なく」、毒虫の「恙虫(つつがむし)」というように使われる「つつみ」が「罪」の語源とされているように、上代の「災厄、障害」なども含まれる「罪」の概念は現代よりもはるかに広範囲にわたっていた。また、「つつみ」は「心の中に包む」ことに通じ、心に包み隠した(秘めた)「邪念」なども「罪」とみなされた。



「罪」とは「想念・思い」が「積み」重なった状態、「穢(けが)れ」を「気枯(きが)れ」=「気(生命エネルギー)の枯渇」と解釈する説もある。つまり「罪穢れ」とは、さまざまな「思い」が重く蓄積され、生命エネルギーが衰えた状態であり、それを浄化し解放するのが「祓い清め」だと。


● [∞] (無限大)に「茅の輪」をくぐる



夏越の祓之図『諸国図会年中行事大成』より

「茅の輪」に使われる植物は端午の節句の「ちまき」を包んだ稲科の「茅萱」(ちがや)。その起源は『備後風土記』に掲載された、スサノオノミコト伝来の「茅の輪の護符」(詳細は関連リンクに)。

「茅の輪くぐり」が終わると参拝者が茅萱を抜き取って持ち帰り、家の戸口に飾って無病息災を願う地方もある。弥高神社のものは「茅萱」の代用に、同じく神聖な稲科の植物で、「鹿嶋祭り」の山車に用いられる「ガツギ(まこも)」をたばねたもの。

「茅の輪」のくぐりかたは、正面から入って左廻り・右廻り・左廻りと「∞・無限大」を描いてくぐるもので(神社によって若干の差異がある)、その軌跡は神官がお祓いの際に手に持って振る「祓串」(はらえぐし)の動きをなぞらえたものといわれている。「茅の輪」をくぐることにより「罪穢れ」を祓い清める。



くぐるとき詠まれる歌が、「水無月(みなつき)の夏越の祓(はらえ)する人は千歳(ちとせ)の命延ぶといふなり」(拾遺和歌集)、「思ふこと皆つきねとて麻の葉を切りに切りても祓へつるかな」(後拾遺和歌集)。

現代語訳「私の思い(悩み)が皆尽き(水無月(みなつき)の掛詞)てしまえと、麻の葉を細かく切りに切って御祓いをしたことだ」



麻の葉は魔除けのパワーがある植物とされ、「夏越の祓」に、たばねた麻の葉を川に流して身を清めたり、切った葉を撒き散らして場や人を清める祓具としたが、現在では麻の葉の代用として、半紙を細かく切った「切幣」(きりぬさ)が多く使われている。


●大祓の人形流しと、呪いの藁人形

「大祓式」では紙の「人形」(ひとがた)に息を三度吹きかけ、体をなでるなどして「罪穢れ」を移したものを、解体した「茅の輪」とともに川に流し、または焚上げて祓い清める。

これは木製の「人形・ひとがた」で体をなでて穢れを移し祓い清める「撫物」(なでもの)が起源で、もともととは陰陽道の呪術であった。平安期の遺跡から呪術に使われたと推定される板状の木製人形が出土することも少なくはない。



身代わりであることから「形代」(かたしろ)とも呼ばれる「人形・ひとがた」が「人形・にんぎょう」の語源であり、それが後世、三月三日の「雛流し」、秋田の「鹿嶋送り」で穢れとともに流される「鹿嶋人形」へと伝えられてゆく。また、呪殺の手段として「人形・ひとがた」に釘を打つ、焼く、切る、埋めるなど、「呪いの藁人形」として知られる、本来の目的を外れた穢れた例もみられるようになる。

「夏越の祓」は本来、旧暦の六月晦日、梅雨が明けた頃の行事、そのため月後れの七月晦日に行う神社もある。秋田市牛島の「三皇熊野神社」でもその日、「人っこまつり」と称して、古式にのっとった「大祓式」がとりおこなわれる。

神事のあと、祓戸大神(はらえどのおおかみ)の人形に、参拝者の「罪穢れを」託した「人形・ひとがた」を背負わせ、「茅の輪」でつくった船に乗せて雄物川河口に流す。どこか「鹿嶋流し」にも似た夏の祭事である。

_________

関連記事

七夕と御盆 祓い清めとしてのネブリナガシ

保戸野諏訪神社の端午祭 秋田市祭事記・初夏(一)

初夏の風物詩・鹿嶋流し 秋田市祭事記・初夏(二)

川尻の鹿嶋祭り 秋田市祭事記・初夏(三)

関連リンク

三皇さんの人っこまつり~夏越大祓 

福島県神社庁 | おもしろ神話講座 | 「蘇民将来」(備後国風土記より) 「茅の輪」の起源

| 祭り・民俗・歳時記 | 22:30 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://20century.blog2.fc2.com/tb.php/450-4de30be0

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT