二〇世紀ひみつ基地

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馬糞饅頭と10円饅頭

●かぐわしき馬糞饅頭

昭和30年代の末頃まで、家の前の未舗装の狭い道を、毎日のように荷馬車が通っていた。仁井田方面の農家から駅前の市場へ野菜類を運ぶ馬車や、屎尿汲取桶を何個も積んだもの、そして馬の落とし物も道のあちこちに転がっていた。

路上で遊んでいてうっかりそれを踏んでしまうと、「○○(名前が入る)ばんば(大便)踏んだぁー、きたねぇ(汚い)、あっちゃいげー(あっちに行け)」と皆に囃されることになる。大人たちもとくにそれを片づけるでもなく、しばらくするとそれは土と化し風に舞う。

荷馬車が通ったあと、道にはホカホカの馬糞が湯気をあげている。そんな光景があたり前だった時代、街のお菓子屋さんには「馬の糞(くそ)饅頭」が並んでいた。



「うまのくそ、二つけれ」などと言って買ったその饅頭は、皮に黒砂糖をつかい、重曹でふくらませた素朴な風味の黒糖饅頭。「馬の糞饅頭」が正式名称なのではなく、その形も色も本物の馬糞そっくりであったための愛称であったが、いつしか街から馬車と馬糞が消え、その呼び名も死語となる。

●10円饅頭と食の崩壊

饅頭といえば最近、秋田市に「10円まんじゅう」のフランチャイズ店が進出して話題を呼んでいる。小ぶりながらも10円という激安価格で販売できる理由を、「中国産の小豆を現地で生餡に加工し、冷凍して輸入しているため」と、「10円まんじゅう」を発案したという若き社長が取材に応じていた。あの毒入り冷凍餃子事件の前のことである。

なかには国産原料使用を謳う店もあるが、中国産の加工餡にわずかの国産小豆を混入して「十勝小豆使用」と臆面もなく表示した例があるように、偽造表示だらけの世の中、どこまで信用して良いものかわからない。

中国産の小豆を使用しているだけならまだ良い。問題は加工餡だ。中国では高価で品薄な砂糖の替わりに、はるかに安価なチクロやサッカリンが普通に使われている。チクロは発ガン性の疑いがあるため、日本では昭和40年代に食品への使用を禁止された人工甘味料である。

チクロについては発ガン性を否定する研究結果もあり、現在は EU圏でも使用され、サッカリンについても弱い発癌性があるとの研究結果から使用禁止になったが、その後の動物実験で発ガン性が示されなかったため、現在、アメリカでは全面解禁、日本ではチューインガム、練り歯磨きなどに限って使用が許可されている。

「10円まんじゅう」に限らず、低価格の菓子パンや和菓子類にも、中国産小豆はもちろん中国製加糖餡を使った商品は少なくはなく、大豆、小豆、小麦粉は言うに及ばず、米粉までも外国産原料が使用されているとあっては、それを和菓子と呼ぶに躊躇してしまう。

最大の問題は現時点で、加工度合いが高いという理由により、パン・菓子類の「原料原産地表示」は義務化されていないということ。もし中国で農薬まみれで作られた小豆を、不衛生な環境で人工甘味料で加工した生餡を使っていたとしても、消費者はそれを知ることも、チャイナフリーを選択する余地も与えられていないのだ。

「馬糞饅頭」が店頭に並んでいた昭和40年に70%あった食品自給率も今では40%を切るありさま。「食防」の手をこまねいているうちに、日本の食環境は取り返しのつかない瀕死状態に陥り、戦わずして「食の植民地」の汚名を着せられるまでになってしまった現状が嘆かわしい。

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| 食材・食文化 | 22:00 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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| - | 2008/04/24 21:00 | |















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