「メトロポリス」がやってきた・活動写真

秋田劇場・秋田市柳町
昭和四年(1929)四月、松竹座で日本初上映された、SF映画黎明期の傑作「メトロポリス」が、同年の九月、秋田市柳町の秋田劇場に於て封切られ、弁士(べんし・無声映画の解説者)として、かの高名な泉天嶺が来秋し名調子を聞かせた。

新聞広告 昭和四年
「新秋を彩る世界的大名画上映百年後の世界」など横書きの文章が、戦前の慣行だった右横書き表記なのに対して、カタカナの「メトロポリス」だけが珍しく左横書きなのがアンバランスで、一瞬頭が混乱する。このような混在は珍しい。
同時上映は、大河内伝次郎主演の「血煙荒神山」と、ハリウッド無声映画期の俳優・阿部豊が監督を務める「母いづこ」。当時は和物と洋物の組みあわせが普通だったが、最先端映画の「メトロポリス」と、コテコテの古典「血煙荒神山」とではあまりにもギャップがありすぎ。

文章は当時の新聞広告より
「メトロポリス」(Metropolis)
製作 1926 ドイツ
監督 フリッツ・ラング
製作時から100年後の世界、2026年の未来都市メトロポリス。地上では高層ビルが建ち並び、市民は物質文明を享受しているが、メトロポリスの心臓部である地下世界では、労働者階級が機械のように働かされている。地上の天国と地下の地獄の対比。
地下世界をアンドロイドに統治させようと企むメトロポリスの支配者。それに反発する支配者の息子が恋するマリアは、メトロポリスを聖書の「バベルの塔」にたとえて、地下の労働者に説き聞かせる先導者的存在の女性だった。
マリアの存在が目障りな支配者はマリアを捕らえ、完成していたアンドロイドを彼女に瓜二つの姿に造りなおして地下世界に送り込む。しかし、アンドロイドは支配者の意に反して、労働者に革命を説く扇動者となる。労働者たちの暴動により地下世界は崩壊、メトロポリスはその機能を全面停止するのだった。その後・・・・。

右上から時計回りに、捕われのマリア、メトロポリス、初代アンドロイドと博士、マリア型アンドロイド
当時の資本主義と共産主義の対立を基調にしたストーリーはともかく、その斬新な特殊撮影による、ドイツ表現主義の深い陰影をともなう、映像と造型の美しさにシビれてしまう。とくにアンドロイドの造型は「映画史上最も美しいロボット」と評されるほど。製作から八十年以上も経っているのに、今観ても古臭さを感じさせない。
フリッツ・ラングによる金字塔「メトロポリス」が、その後のSF映画に与えた影響は大きく、未だに多くのアーティストたちのインスピレーションの源となっている。
電子音楽の大家にしてディスコ音楽の父・ジョルジオ・モロダーは、オリジナルフイルムを収集し、新たにサウンドトラックを追加、一部をカラー化した「メトロポリス新版」を製作、昭和五十九年(1984)に公開した。
YouTube に「メトロポリス」の映像が多数アッブされている。お薦め動画のリンクは下記に。
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