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国民新聞遊覧団来秋す・明治四十二年

鉄道網が本州に整備され、田山花袋ら文筆家による旅行書が数多く出版された明治末、富裕層のあいだに第一期旅行ブームが起こる。そのさなかの明治四十二年(1909)九月十九日、東京の国民新聞が主催した東北大遊覧会の一行、二百三十名が秋田市に到着した。


千秋公園・中土橋

遊覧団一行が停車場から広小路を通って千秋公園の入口、中土橋にさしかかったところを、土手の上から撮影した写真。

一行は当日の午前十一時三十分、湯沢に到着、郡長、町長以下数十名の出迎えのなか、歓迎の煙火(はなび)が打上げられ、有志より銘酒二百本、林檎等の寄贈あり。横手町では、郡長代理、町長以下数百名が列をなして送迎、ビール、葡萄、林檎などを一同に配り、芸妓が総出で酌の接待。大曲町でも煙火(はなび)打上げ、絵葉書等の贈呈があった。

午後二時二十分、秋田駅到着、楽隊の演奏のなか、森知事、小山事務官、井上県会議長、辻兵吉商業頭取、その他官民の主なる人々数百人が万歳を唱え、川反芸妓が一人ひとりに自らの名刺付き花束を贈り歓迎の意を表す。

停車場前の接待所に小憩、茶菓を喫したあと、大槻助役を先頭に千秋公園と水道施設、物産陳列場を見学、午後六時三十分、公会堂で歓迎会を開く。会場内に金銀細工、樺細工等を陳列し、記念絵葉書を投函する特設ポストを設け、余興として竿燈と秋田音頭が披露された。

彼らは秋田に入った近代団体旅行のさきがけだったのか、観光誘致という思惑があったにせよ、遊覧団一行は各地で熱烈な歓迎を受けている。

明治四十二年といえば、この年の七月から八月にかけて、「秋田魁新報」「東北公論」「秋田時事」の新聞三社が県の賛同を得て、秋田県をPRするため、在京の新聞雑誌記者十数名を招待した、秋田観光元年といえる年であった。

新渡戸稲造、中里介山、中野正剛など、そうそうたるジャーナリストたちが参加した「秋田観光記者団」が各誌に掲載したルポルタージュは、同年『知られたる秋田』というタイトルで書籍化された。『知られたる秋田』は昭和六十年、秋田の無明舎出版により復刻されている。

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写真の細部を見てみよう。



お堀と道路の境にあるのは柵ではなく土盛。「国民新聞・遊覧会」の文字が染められた手旗を手にする人々。「国民新聞」の幟旗(のぼりばた)に囲まれて、数人の楽隊が行進している。

近代興行史に詳しい方ならば、この光景を見て「町廻り」を連想するに違いない。「町廻り」とは、広告メディアが新聞ぐらいしかなかった時代、活動写真、演芸、曲馬(サーカス)などが興行を打つ際に、幟旗を持ち、楽隊などの鳴り物をともない、チラシを配りながら町々を宣伝して歩くことで、形態としてはチンドン屋に似ている。というより「町廻り」はチンドン屋のルーツのひとつなのだ。

実は遊覧団には吉沢商会の活動写真班が同行し、この日の夜、おそらくは国民新聞の宣伝を兼ねたものだろう、旧八幡神社境内で活動写真を上演しているのだ。このことから、写真に写っている楽隊も、吉沢商会の専属楽隊の可能性が高い。

吉沢商会は日本に於ける映画の黎明期から活動し、日本初の映画常設館「電気館」を浅草にオープンさせたことでも知られる興行会社。後の日本活動写真株式会社(日活)の前身の一社である。



広小路を渡った突き当たり、現在の日本生命ビルおよび、駐車場(セントラルデパート跡地)の敷地に建つ旧八幡神社は、明治四十年、八幡神社が千秋公園本丸の秋田神社に合併されたあと、建物だけが残っていたもので、このあと間もなく弥高神社が入る。弥高神社が千秋公園二の丸の現在地に遷され、大正七年、その跡地に県立図書館がオープン。


弥高神社(旧八幡神社)右手の道路が広小路



着物に学帽、麦わら帽子の子どもたち。手前の四人は土手の上のカメラに眼差しを向けている。



広小路を進む行列の後ろ、看板が掲げられた商店は、現在の加賀谷ビルの場所。角を曲がれば東根小屋町。



現在の中土橋と広小路 2007.10

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千秋公園外濠ノ景

こちらは神田の古書店で入手した「国民新聞主催東北遊覧会歓迎記念 明治四十二年九月十九日 秋田市」の記念スタンプがある絵葉書。遊覧会の参加者が購入、または進呈され、当日の十九日、千葉県宛に投函したもの。拡大画像、詳細などは以下関連記事に。

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大正期の中土橋・千秋公園入口
公園外濠ノ景・風景を読む
県立秋田図書館・広小路

関連リンク

國民新聞 ウィキペディア(Wikipedia)

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