二〇世紀ひみつ基地

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愛おしき白玉の君に

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●白玉のおもいで

子どものころの夏のおやつで、いちばんの楽しみであり、忘れがたいのものは「白玉」である。

白玉粉に水を少しずつ加え、耳たぶほどの固さにこね、手のひらで丸めて、火が通りやすいように親指でエクボをつけ、まるで赤血球のような形にして茹であげる。その丸めて親指で押して扁平にするまでの仕事を、子どもたちも手伝った。だからでき上がった白玉は不揃いで、「これはオラがつくった」などとわいわいと言い合いながら口にしたものだ。

白玉は砂糖水で食べる。水に浮かべた白玉に砂糖をぶっかけて、かきまぜて食べるのである。まだ一般家庭には冷蔵庫が普及していない時代、生ぬるい砂糖水につかった白玉ではあったが、それはモチモチと柔らかく、ツルンとした舌触りと喉ごしが、たまらない涼味をもたらしてくれた。

白玉のもつ自然な風味を味わう最良な食べ方はこれに尽きる。シンプル・イズ・ベスト。

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白玉にとけのこりたる砂糖かな 高浜虚子

ツルンとした白玉に、溶け残る砂糖のザラリとした食感が野趣を添える。

●江戸の冷水売りと白玉

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冷水売り

江戸の風物を記録した『守貞漫稿』に掲載された「冷水(ひやみず)売り」の図である。

添えられた説明には「冷水売 夏月、清冷の泉を汲み、白糖と寒晒粉の団とを加へ、一椀四文に売る。求めに応じて八文・十二文にも売るは、糖を多く加ふなり。売り詞、“ひやつこい ひやつこい”と云ふ。」とある。

「寒晒粉(かんざらしこ)」とは、白玉粉の別名、「団」は団子のこと、つまりこれは冷水に白玉団子を浮かべ砂糖を加えた白玉売りのことである。砂糖の量で料金が変わり、白糖のみを加えた「砂糖水売り」もあり、容れ物には錫や真鍮など金属製のものが多く用いられたという。

子どものころに口にしたあの、おふくろの味「白玉」は、江戸の風情を今に伝えた、粋なおやつだったのだ。

桶に天秤棒で冷たい井戸水を売り歩く商売は秋田にも存在したことを、明治生まれの鷲尾よし子が記録に残しているが、その売り声は「ハッコイ冷水。ハッコイ!」と江戸と似て、一杯が一文か二文だったという。白玉砂糖入りの冷水もあったのではなかろうか。

明治の人、柴田流星は『残されたる江戸』のなかで「白玉入りかき氷」の魅力を著している。

心太と白玉

‥‥前略‥‥氷屋が店なる「白玉」のビラを横目に見て通りあえぬ。紅白の美しい寒晒粉を茹上げた玉幾つ、これに氷を交えて三盆白をふりかけた奴を匙で口にした気持ち、それが食道を通って胃腑におちいた時には骨の髄までも冷さが沁入るようで、夏の暑さもサラリと忘れたよう、何が旨い彼が好いと言ってからが、この味いはまた格別。それにこうして胆ッ玉まで冷やすところなざァ江戸ッ児に持ってこいの代物(しろもの)、これでなくちゃァすべてがお話にならねえのだと誰やらに言わしたら拳固で鼻ッ面を横撫でするところだろう。‥‥後略‥‥

柴田流星『残されたる江戸』明治四十四年 より

江戸っ子・流星のべらんめえ調の文章が可笑しい。

紅白の白玉にかき氷と、さらには白砂糖をぶっかけて食べる「白玉入りかき氷」もなかなかシンプルで美味しそう。

ちなみに、秋田市内で「白玉入りかき氷」といえば、楢山の斎藤もちやが有名。自家製の白玉は、さすがに餅は餅屋といえる一品である。

●新屋の白玉屋

白玉粉の別名「寒晒粉」は、精白したもち米を厳冬期に冷たい流水に十日間ほどさらし、乾燥製粉したことからの命名であるが、良質な米と水、そして寒冷な気候にはぐくまれて精製された秋田の白玉粉はとくに品質に優れていた。

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白玉粉・寒晒粉

かつて秋田市新屋地区には白玉粉を製造販売する米屋が二軒あり、県内はいうに及ばず、県外までも広く販路を持ち、夏の需要期には製造が追いつかないほどの忙しさだったという。

新屋はご存知の通り、良質な地下水に恵まれ、酒造業の盛んなところで、海が近く冬は寒風にさらされ、白玉粉の製造には最適の地であったのだ。

白玉粉が身近な存在であった新屋では、端午の節句には白玉粉と団子粉でつくるチマキをつくり、御盆には白玉を精霊に供え家族も食べた。夏の暑い盛りには、白玉に冷水を注ぎ、その上に砂糖と、みじんにした梅漬の紫蘇の葉を少しのせて食べるのだという。

●白玉はお月さま

子どものころ家で使っていた白玉粉の紙袋には、赤丸に白抜きされた兎のマークが印刷されていた。ソフトクリームでも有名な、昭和町の淡路製粉の白兎印である。

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淡路製粉・白兎印

月で兎が餅を搗く話があるように、「兎」は「月」を象徴しているのは言うまでもない。「月」は「搗き」であり、「望月(もちづき)」は「餅搗き」である。

古代「白玉」とは海の「真珠」を意味する言葉であったが、「真珠」は、月のしずく、月の化身、などと表現されてきたように、夜の天体の代表である「月」を象徴し、古来霊力を持つとされる「タマ(玉・球・珠)」=「タマ(霊・魂)」として尊ばれた。

だから陰暦八月十五日の望月=満月、中秋の名月の「お月見」には、月のように真珠のように丸く透明に輝く白玉団子を、お月さまにお供えするのだ。

月見団子の形は、関東では円球が主流だが、関西ではサトイモ型を用い、静岡県中部地方では、扁平で真ん中にエクボがある「へそもち」という団子をお供えする。その形状は、お馴染の白玉のようで面白い。

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関連リンク

淡路製粉オンライン

十五夜のへそもち(静岡第一テレビ情報サイト)

| 食材・食文化 | 22:00 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

先日のテレビでずんだあんと白玉を組み合わせたお菓子を作りました。
私も子供の頃のおやつといえばおばあちゃんが作ってくれた白玉を思い出します。缶みかんとシロップだけの白玉でしたが美味しかったな~

| yoneko | 2006/08/28 13:12 | URL |

白玉はシンプルな調理方法で食べると、白玉粉の品質が差が歴然としますね。もち米のランクが違うのでしょうか、風味が全然違います。

| たふらんけ。 | 2006/08/29 16:51 | URL |

はじめまして
いつも楽しく拝見しています。
なつかしくて泣けてきちゃいますね。
日新小の坂を下った辺りに同級生だった、白玉屋さんがあったと思います。
記憶が蘇りワクワクしちゃいます!
これからも懐かしい情報期待しています。

| てれきゃす | 2010/12/28 17:02 | URL |















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