テキ屋のジョニー君
今年の竿燈期間中、秋田駅前ポポロードで、怪しげでどこかなつかしい実演販売を見た。
通路の中央にできた円陣の人込みに足を止めると、三十代なかばほどの男が、小さな人形を声で操っている。人形は手のひらにすっぽり隠れるほどの大きさで、胴体は紙、脚がゴムとスポンらしきもので作られていて、男が「ジョニー君、ジャンプ!」と命令すると、直立した人形はまるで生きているかのようにピョンピョンと飛び上がり、差しだされた紙の上に乗った。そのほか「正座」「腹筋」「おやすみ」「宙返り」「回転」など、ジョニー君はどんな命令も簡単にこなす。
その姿はさながら、中世の陰陽師が、紙に命を吹き込み操ったという式神が現代に蘇ったかのよう。

見ていた子供が声を掛けても同様に命令に従う。おまけにジョニー君はバイリンガルなので英語でも日本語でも聞き分けるのだ。
どんな仕掛があるのかとしばらく見物していたが、操る糸も不審な動作も全くみられない。ジョニー君の頭の上を紙で遮ったまま命令してもジャンプを続ける。
ひとしきり実演したあと「これにはタネと仕掛がありますが、ちょっと練習すれば誰でも簡単にできます。説明しますと……」といいながら、ジョニー君の背中を指さし、「この部分にこのシールを貼ってください。あとは説明書を読めば誰でもできます」と、その厚手のシールにこそ重大な秘密があるかのような素振りをみせ、一体1000円のジョニー君を売りはじめる。
それ以来、頭の隅っこに引っかかっていたジョニー君の正体が気になってネットで検索してみると、たくさんの情報が掛かってきた。
そのタネを要約すると、見物人の中にサクラがいて手品用の見えない糸でジョニー君を操っているが、見ているほうは実演に注目しているので、指先をかすかに動かしているサクラには意識がいかない。販売用のジョニー君には、釣り糸のような見える糸が入っていて、タネとして説明された背中に貼るシールは、糸を固定するものらしい。
男は「もっと近くに寄って見てください」と再三声を掛けていたが、客が後ろに下がってしまうとサクラの動きが後ろから覗かれてしまうためだ。客を円陣に集めるのも、サクラの後ろに人を集めないための工夫なのだろう。
通常の販売価格は1セット500円。人出の多い時期は1000円。
見ているうちに何体か売れていたが、家に帰ってがっかりした人も多かったのではないだろうか。しかしそれに文句を言うのは野暮というもの。原価数十円のものが1000円では暴利だが、大道芸としてみれば、口上とテクニックで人を惹きつける見事なパフォーマンスといえる。
サクラと口上を駆使する手口はテキ屋のやり方と同じ。ジョニー君の実演販売は、かつて祭りの露店や、学校の校門近くの路上に現れて、インチキネタ(商品)を売っていたテキ屋のおじさんの現代版なのだ。
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小さな動画あり(外人売人)
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その姿はさながら、中世の陰陽師が、紙に命を吹き込み操ったという式神が現代に蘇ったかのよう。

見ていた子供が声を掛けても同様に命令に従う。おまけにジョニー君はバイリンガルなので英語でも日本語でも聞き分けるのだ。
どんな仕掛があるのかとしばらく見物していたが、操る糸も不審な動作も全くみられない。ジョニー君の頭の上を紙で遮ったまま命令してもジャンプを続ける。
ひとしきり実演したあと「これにはタネと仕掛がありますが、ちょっと練習すれば誰でも簡単にできます。説明しますと……」といいながら、ジョニー君の背中を指さし、「この部分にこのシールを貼ってください。あとは説明書を読めば誰でもできます」と、その厚手のシールにこそ重大な秘密があるかのような素振りをみせ、一体1000円のジョニー君を売りはじめる。
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そのタネを要約すると、見物人の中にサクラがいて手品用の見えない糸でジョニー君を操っているが、見ているほうは実演に注目しているので、指先をかすかに動かしているサクラには意識がいかない。販売用のジョニー君には、釣り糸のような見える糸が入っていて、タネとして説明された背中に貼るシールは、糸を固定するものらしい。
男は「もっと近くに寄って見てください」と再三声を掛けていたが、客が後ろに下がってしまうとサクラの動きが後ろから覗かれてしまうためだ。客を円陣に集めるのも、サクラの後ろに人を集めないための工夫なのだろう。
通常の販売価格は1セット500円。人出の多い時期は1000円。
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