二〇世紀ひみつ基地

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2010年02月 | ARCHIVE-SELECT | 2010年04月

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団欒の群像・秋田駅前モニュメント

阿部米蔵によるパブリックアート・その2




阿部米蔵「団欒の群像」昭和36年(1961)

秋田大学教官として在籍した昭和20年代末から高度経済成長期にかけて、県内の広場・公園・街路などの公共空間や校庭に、数多くの作品を残した彫刻家・阿部米蔵氏によるモニュメント。

昭和36年(1961)、秋田ライオンズクラブの発足を記念し、落成したばかりの秋田民衆駅(旧秋田駅)前に建立後、市に寄贈された「団欒の群像」は、数ある阿部氏のパブリックアートのなかで最も印象的なブロンズ作品で、初期野外展示作品の代表作のひとつ。その制作意図を、作者が魁新報に寄稿した文章が、哲学的で難解ながらも面白い。
 ‥‥前略‥‥
およそ広場という空間は単に計画者の意志によって作られるものではなく、時代に生きるあらゆる階層の人々の背後にあって、生命をあずかる不可視の存在が人間計画と一つにとけて形作られる都市の大きな動的なうず巻であり、したがってものすごい流動性をもつことは当然である。

制作を主体として生きる限りある人間が無限な実在に預かるみちは、感性を主体ととする主観の堂奥に至らなければならない。感性的な主体はあらゆる存在の根源へとかえっていく。人はかくして有限な存在でありながら無限なる実在に預かることが可能であろう。それは全宇宙を貫く不可視な力への思慕である。
 ‥‥中略‥‥
知や徳は人間世界だけのもの、慈愛と光は全生物を貫き、全宇宙を動かす力であり、この慈愛と光の存ずるところ実在は存ずる。
‥‥中略‥‥
駅前広場に感じられる不可視なうず巻はそれ自体凝集力と放散する力を同時に使途するが、分離と散乱は本来の習性ではない。存在は結合の機会をねらっている・・・。結合しつつある。精神は存在をして総体たらしめる総合力であり、その最も原初的純粋な多くの人々に共通の形相は、家族のフォルムである。家族のフォルムの原初形態は、あらゆるものの分離と散乱にあるものを、生きた一つの結合体にまでもたらす慈愛と光を内に包んでいる。

家族は単なる肉体の連続ではなく、それを通して肉体を和解し、肉体を支配しつつそこにいっそうの高い創造過程を生きんとするものである。民衆駅の乗降客、観光団、通勤通学の人々の原初的形態として感じられるフォルムを、団らんの群像の形態で考えた。裸婦は東北面に、そして童児は東南の方向を選び、若い両性にみつめられながら、生成を楽しむ形姿、原初的家族の団らんは、奈良薬師寺東塔相輪の構成に教えられた。
 ‥‥後略‥‥
『ふたつの群像』阿部米蔵 昭和36年「秋田魁新報」より

旧秋田駅と「団欒の群像」


オープン当時のヨーカドーと「団欒の群像」昭和55年(1980)

当所は約2.5メートルの高い台座で、現在の「東西連絡自由通路・ぽぽろーど」直下にあったが、新秋田駅建設の前後に南寄りの現在地に移動、変化した周囲の環境に合わせて、台座も低く造り直されて今に至る。






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二〇世紀ひみつ基地 中通タマゴ公園のひみつ・遊びの彫刻

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ドキュメント映画『花々の過失』予告編・友川カズキ

LA FAUTE DES FLEURS _ a portrait of Kazuki Tomokawa (trailer) from vincent moon / temporary areas on Vimeo.


友川カズキ主演のドキュメント映画『花々の過失』((原題:La Faute des Fleurs))の予告編が公式サイトで公開されている。

バックに流れる曲は、秋田の暗く厳しく莫迦(ばか)くさい(退屈な)冬と、やがて巡り来る春への、復讐心にも似た待望を唄った70年代の作品「冬は莫迦くへなぁ」。

冬は莫迦くへなぁ 友川かずき

おじっちゃは
でごのがっこを
ガリガリかじってえだ

おがっちゃは
でどごで
ふぎの煮づげをこへでえだ

俺は
薪ストーブの
そばでいつまでも赤ぐなってえだ

冬は莫迦くへなぁ
寒いばしで莫迦くへなぁ
春早ぐ来てみろ! 春早ぐ来てみろ!
このまま黙っては居ねがらな

てんぽ山は
吹ぎざらしで
人間の行ぐえだどこでねえよ

八郎潟は
本気になって
けものみだいにのしかがって来たよ

泣げ面(つら)わらしも
きだふり姉ちゃも
そのうぢ何も言わねぐなたよ

冬は莫迦くへなぁ
寒いばしで莫迦くへなぁ
春早ぐ来てみろ! 春早ぐ来てみろ!
このまま黙っては居ねがらな

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関連リンク

| 映画『花々の過失』(原題:La Faute des Fleurs)公式サイト

友川カズキ :: KAZUKI TOMOKAWA

友川カズキ KAZUKI TOMOKAWA ( official ) - MySpace

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中通タマゴ公園のひみつ・遊びの彫刻

阿部米蔵によるパブリックアート・その1

●タマゴ公園とタマゴの由来


2009.08

タマゴ形の遊具が公園のシンボルになっている、秋田市の中心部にある「中通三丁目街区公園」、通称「タマゴ公園」。

この公園はもともと「秋田大学教育学部附属幼稚園」の敷地であった。昭和31年、幼稚園の創立45周年記念事業として園庭に、タマゴ形のプレイ・スカルプチャー(遊びの彫刻)を設置。



昭和43年、附属幼稚園・附属小中学校は現在地の保戸野に移転するが、コンクリート製のタマゴは移送が困難だったため、そのままこの地に残されることに。同43年、約3千7百平方メートルの幼稚園跡地を市が公園として整備し今に至る。

設置当時の園長が、北欧で流行していたプレイ・スカルプチャーのことを聞きおよび、秋田大学の教官であった阿部米蔵氏に制作を依頼。当時としては他に類を見ない非常に斬新な試みだったという。



表紙写真説明

「北欧のアンデルセン的童話的意図が新しい時代感覚をおびた造形となってあらわれたもの・・・」(手塚又四郎氏)
高さ六尺余、長径八尺の大きい卵形のセメント製遊びの彫刻で内部にトンネル様の通路をめぐらしてある。子供達が外から眺め或は触れてよろこび、内にもぐり、かくれ、所々の穴から頭や身体を出したり、ひっこませたり、中の小穴から外をのぞいたりなどでこの遊具と親しみ、知らず識らずのうちに、美的情操を高め、遊びをゆたかにしようとするために考案されたものである。(秋田大学教官 阿部米蔵氏作)
秋田大学教育学部附属幼稚園発行『芙蓉』 第31号より
由利郡岩城町亀田出身の彫刻家・阿部米蔵氏は、秋田大学に教官として在籍中の昭和20年代末から高度経済成長期にかけて、県内の広場・公園・街路などの公共空間や校庭に数多くのモニュメントを残している。


●胎内回帰装置としてのタマゴ

幾何学的ラインが描かれ、数ヶ所に穴が空いた外観も面白いが、なんといっても最大の見どころはその内部。外光に照らされて濃淡の陰影を描く乳白色の肌は、体内の曲線のようになまめかしく、人目もはばからず、思わず潜り込みたくなるほどの吸引力を感じさせる。









内外面に描かれた、猥雑のなかにどこか哲学的な文章も垣間見られるイタズラ書きも、ひとつのアートと云えなくもないが、少し前にタマゴの内外は塗り替えられて、撮影時点(2009.08)にあったこれらのイタズラ書きと、味のある肌の風合いは消えている。

あらためてその内部を覗いたとき、これは“胎内”もしくは“タマゴという母胎”だと思った。制作にあたった阿部氏の構想にも「命を育むタマゴ」=「母胎」というイメージがあったのではないだろうか。

修験道を起源とする「胎内潜り」の風習が各地にある。それは洞窟や洞穴を神仏、とくに女神の胎内に見立て、そこを潜り抜ける行為により「死と再生」=「生まれ変わり」を疑似体験し、枯渇した生命力をリフレッシュせんとする自然回帰的修業の一種。

タマゴに入る(帰る)という胎内回帰的・自然回帰的遊びを通じて、子どもらは無意識のうちに、ミニ「胎内潜り」という「死と再生」を体験しているのだとも云える。それはとてもスリリングで根源的な遊びではある。



設置から半世紀余りのあいだ、いったい幾人のや子どもがタマゴの胎内に帰って(潜って)遊んだことだろう。この手の遊具は時代とともに魅力と存在感を失い、遊ぶ子どもの姿も消えることが多いが、タマゴ公園のプレイ・スカルプチャーだけは、今もなお近所の子どもらや住民たちに、公園のシンボルとして愛されつづけている点において、数ある阿部氏の野外展示作品のなかでも、異色ではあるが知られざる傑作といえよう。




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