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二〇世紀ひみつ基地

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クサレタマグラ・秋田方言

クサレタマグラなんさでもハマル

「タマクラ」とは、鎌や鉈などの、刃物と柄の間をつなぎ止める金属製の輪っかのこと。肝心かなめな部品であり、これが壊れたり腐ったりすると使い物にならない。



「タマクラ」が腐食して締まりが悪くなり、なんにでもハマル状態を、役に立たないくせに、何にでも口出ししてお節介を焼く者にたとえて「クサレタマグラ」と呼ぶ。それを肯定的にとらえれば、好奇心・弥次馬根性旺盛な者と拡大解釈することもできる。

別名「ボッコレ(壊れ)タマグラ」「メクサレ(目腐れ)タマグラ」。

しかし、一般的にいわれているこの説には不自然なところもある。「タマクラ」が腐れたり、壊れたりすることは、「なんにでもハマル」というよりは、「グラグラして使い物にならない」状態になることだ。だから、「クサレタマグラ」「ボッコレタマグラ」とはもともと、単に「使えない・役に立たない者」をさす言葉で、それが時代とともに変化したのではないだろうか。

「クサレ」は「腐れ」という意味のほかに、「クサレ○○○」などと使われる、罵倒語の接頭語にもなる。「クサレタマグラ」もその類の言葉といえるだろう。

その語源

「タマクラ」の語源は、万葉集の枕詞にも用いられる「玉釧・タマクシロ」=「上代の装飾品、玉で飾った腕輪」との説があり、また、「環・タマキ」=「手に巻く装身具」と「輪・ワ」が重なった「タマキワ」の転訛したものともいわれている。

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発掘された銅製の「環・タマキ」

腕に着けたまま葬られたため、その骨が残っている。

もうひとつのタマクラ

頚に白っぽい環状模様がある太いミミズを、「タマグラ」「タマグラミミズ」と呼ぶが、宮城県では「タマグラ」は「カタツムリ」をさす方言なのだという。

また、木の枝を二つ割りにして、魚を焼くときの焼き串としたものを、ばらけないように留める、木製もしくは土製(素焼)の輪っかのことを「タマグラ」と呼んだ。この焼き串は「挟み串」といい、魚の形をこわさずに焼くときに使われる。

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木製タマグラ

縄に通されて連なる形が、古代の「玉釧・タマクシロ」のようだ。

民族学者・柳田国男によれば、「タマクラ」はタマキ(環)のことで、魚を焼く木の枝や割竹の類、または藁苞(わらづと)を一つに束ねるための道具としているが、「タマクラ」という言語の分布については記していない。広い地域で輪っかのような環状の道具をすべて「タマクラ」と呼んだ時代があったのではないだろうか。

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ホジナシの語源を探る・秋田方言



秋田の方言「ホジナシ」の「ホジ」は、仏教用語の「仏・菩薩の本来の姿」を表す「本地」が語源で、その「本地」は後に「正気・本心」という意味にも使われるようになる。つまり「ホジナシ」とは、「本地=正気」が無い者、しっかりした意識が無いヤツを意味する。

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秋田では幼い子どもに「やっとホジ付いてきたなぁ」(しっかりした意識を持った子供に成長してきたな)というふうにも使われ、酒を飲んでつぶれた状態は「ホジを無ぐす」(正気を失う)と表現される。青森県下北では、酔っぱらって意識を無くすことを「ホンジを落とす」というのだそうだ。「ホジ」は、無くしたり、出たり、付いたり、落としたりするモノ。

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方言辞書のなかには「ホジ無い」を「方図(ほうず)無い」と解するものもある。「方図」とは「限り・限度・際限」という意味で、「方図無い」とは「際限が無い」ことを表すのだが、これでは何のことかあいまいで、「ホジが付く」「ホジが出る」「ホジを無くす」という方言の意味を解説することもできない。ために「ホジ=方図説」は間違いといわざるをえない。

平安末期の『堤中納言物語』「虫めづる姫君」に「本地・ほんぢ」は「もとの姿。本性。物の本源」という意味で使われている。

原文
人々のはなてふやとめづるこそ、はかなくあやしけれ、人はまことあり、ほんぢたづねたるこそ心ばへおかしけれとて‥‥‥

現代語訳
みんなは花や蝶々を鑑賞して喜んでいるけれど、それは違うと思います。人は、誠実に、モノの本性を見究めようとする事が素敵だと思うのです。

南北朝時代の成立という、御伽草子『酒呑童子』において、酒呑童子はこう語る。

原文
かのやつばらが是(これ)までは、よも來(きた)らじとは思へ共(ども)、つねに心にかゝる故(ゆへ)、酔(ゑ)ひても本地(ほんぢ)忘(わす)れずとて

現代語訳
あの連中が、よもやここまでは来るまいとは思うけれども、いつも気にかけているので、酒に酔っても、私は「ほんぢ・本地」を忘れないのだ

酒を飲んでも、自分は「本地なし」になることは無いと酒呑童子は自信満々に語る。「ほんぢ・本地」は、この時代の民衆にはなじみ深い流行り言葉であり、酔っぱらって意識を失った者を「本地なし」と呼んだに違いない。

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文化の中心・京都から南北朝時代に出発した流行り言葉「本地なし」は、同心円状に四方に拡散していく。言葉は人の口から口へと、ゆっくりと永い旅を続け、辺境へとたどり着いたころには、中心である京都では、すでに新しい流行り言葉が生まれて古い言葉は廃れ、辺境の地に行けば行くほど古い言葉が残ることになる。

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ホンジナシ系言語分布図
参考『全国アホ・バカ分布考』 松本 修   新潮社

アホ・バカ系言語のなかでは最古の、ホンジナシ系言語の、おおまかな分布イメージである。

※現代仮名遣いでは「ほんじ」とするのが正解だが、旧仮名遣い「ほんぢ」のほうがもともとのニュアンスを伝え、ロゴデザイン的にも美しいため、画像はすべて「ぢ」に統一した。

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秋田名物「猿貝焼」のお話

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秋田では猿を貝焼(鍋物)にして食べる習慣が古くからあり、市民市場や魚屋に行けば新鮮な猿肉をいつでも買い求めることができる。

脂の乗った厳冬期から木の芽を主食とする春先の猿の味は格別だ。フォアグラのような脳味噌の濃厚でありながら、サッパリとした味も食通をうならせる。猿肉は体が温まり、子どもの夜尿症にも効果があると伝えられている。

‥‥などというホラ話はさておき、南秋田、秋田、仙北周辺に分布する「さるかやぎ」というユニークな方言は、「ばか者め!」とか「畜生!この野郎め!」というニュアンスの罵倒語であり、また、軽はずみなお調子者に対しても「この、さるかやぎ!」と使われる言葉である。

この方言には元々「猿を貝焼にして食べるような人で無し」というような意味合いがあるのではと考えていたが、『語源探求 秋田方言辞典』(編著・中山建)によれば、その語源は江戸語の「猿返・さるっかえり」という、玩具の飛人形に猿を用いたものにあり、それが転じて、軽佻浮薄な人をののしって言う語になったものとし、「サルッカエリ→サルカヤリ→サルカヤキ」と変遷したと考察している。

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「飛人形」という玩具は「とんだりはねたり」などの別名をもつ江戸玩具で、浅草名物として江戸中でもてはやされた人気の玩具だったという。

今も浅草では復活された「飛人形」が売られているが、その構造は、張り子のつくりものをのせた割竹の下部に仕掛けた竹片をうしろに回し、ニカワ(粘着剤)で止め、下に置き、しばらくすると仕掛がはじけて、突然飛び上がり宙返りするというもの。

張り子のつくりものは、猿や兎などの動物もののほか、人物をかたどった役者ものがあり、その人形にかぶりものをかぶせた「亀山のお化け」と呼ばれる「飛人形」は、仕掛がはじけて飛びあがったとき、かぶりものがはずれて、いろいろな動物などの姿が現れるという趣向をこらしたものであった。

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猿の「飛人形」想像図

猿を題材にした「飛人形」は見たことがない。この想像図は古い役者ものの「飛人形」の写真を参考にし、人間の顔を猿に変えて描いたもので、うしろにあるのがかぶりもの。

もうひとつ、これは自説だが、秋田・青森方面には「けやぐ」という方言があって、実際に聞くと「かやぎ」に限りなく近い発音である。

「けやぐ」は「契約」が語源で、親友とか仲間を意味する言葉。だから、「さるかやぎ」は「猿契約」が語源で、「猿の仲間」=「猿と同類」=「畜生」と、人を卑下する言葉だった可能性はないものだろうか。

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土崎出身の劇作家・金子洋文は『牝鶏』のなかで、「畜生ッ、畜生ッ、手前のやうなごろつき出て行きゃがれ、一刻も早く出て行きやがれ、この猿鍋(さるかやき)」と故郷の方言を使っている。さすが「さるかやぎ」の本場、土崎の湊っ子・洋文先生はその使い方も的確である。

最近マスコミを賑わせた、民主党の永田とかいう若造と、その取り巻き連中も「さるかやぎ!」と呼ぶにふさわしい。

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飛人形の動きが見られます

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「たろんぺ」は由緒正しき方言

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雪の中を夢中で駆けまわり、のどが渇いたら、雪を食べるか、軒にぶら下がった「たろんぺ」をなめたりかじったりして、のどを潤した子供のころは、今よりも雪は高く積もり、容易に軒に手が届いた。よく育った長い「たろんぺ」はチャンバラの刀にもなるが、すぐにポッキリ折れてしまう。子供らにとって「たろんぺ」は、その名の響きとともに親しみ深い存在だ。

秋田の方言「たろんぺ」の語源は「垂る氷・たるひ」つまり、「垂れ下がる氷」という意味の古代のことば。それに対して標準語の「つらら」は氷柱ではなく、普通の「平らな氷」を意味していた。しかし、中世からは「たるひ」が廃れ、「つらら」が転用されるようになって現在の標準語となった。

「たるひ」系の方言は、東北と北陸や九州の一部に残る。
県内では「たろっぺ」「たらんぺ」「たろんぺ」「たらこ」等が分布。変わったところでは、由利地方の「たろごじろご」、南秋田の「がら」がある。

朝日さす軒のたるひは融けながら
などかつららの結ぼほるらむ
『源氏物語』

現代語訳
軒の氷柱は朝日にとけながら、
どうして地面に張った氷はとけないでいるのでしょうか
意訳
あなたは表面は気を許したように見えながら
どうして底の方で打ちとけないものがあるのですか


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